盤嶽の一生

放送日 2002年3月5日~6月8日 火曜時代劇(フジテレビ系)
全10話のうち、第9話・第10話は地上波本放送ではカットされた。

本放送当時に書いた概略(2002.5.22)

ちょうど3年前の太秦サイン会の際、現在撮影中とコメントされていたのが本作である。それが撮影終了から2年近くたって放送されることになったかという点をここで是非指摘しておきたい。
かつてテレビは一家に一台しかなく、それも多くは父親がチャンネル権を持っていたため、巨人戦・時代劇・刑事ものがTVの王道であった。しかし近年いわゆる「F1層」を過剰意識したドラマ制作側の指向により、時代劇に関しては各局とも少数の看板番組(水戸黄門・暴れん坊など)とその放送枠を除いてほぼ撤退の状況にある。
これら生き残り時代劇の特徴として、看板番組αを中心に、α⇒β⇒αというローテーションでβにつなぎ的に新企画を放送するというパターンがみられる。しかしこのローテーションは看板番組αが終了すると当然のことながら崩壊する。「鬼平犯科帳」終了という事態に直面したフジテレビは、同局で唯一残っていた水曜8時の時代劇枠をバラエティにシフトし、結果時代劇は完全に消滅した。
このためこの時点で既に製作されていた時代劇はフジテレビの倉庫に眠ることとなる。この局はこのテのことを頻繁に行っており、「八丁堀」や「雲霧」の最終回が数年間お蔵入りになり、いずれもCSで初放送という、地上波視聴者をバカにした行為に及んだことは記憶に新しい。ともかく「盤嶽」はこのフジテレビの方針を受け放送のめどが立たない状況となる。
平成13年(2001年)春、火曜8時に枠を移して時代劇復活となった。オープニングの役所盤嶽の姿を見て、放送がすぐにでも始まるような感触を得たのは私だけではあるまい。しかしながらフジテレビの倉庫に眠っていた作品は盤嶽だけではなく、既往の作品で時代劇ファンにも馴染みの深い「剣客商売」「退屈男」「斬九郎」といった面々が揃っていた。このため、全くの新作である盤嶽はこれらの放送完了を待たなければならない境遇にあった。さらに、火曜8時という極めて不安定な時間帯(野球中継や特別番組等で容易につぶされる時間帯である)のため、本来順調に消化されていれば昨秋にも開始されるべきであるにもかかわらず、放送枠復活から丸一年が経過した平成14年(2002年)3月という何とも中途半端な時期の放送開始となった。冒頭に書いたように3年前の秋には撮影開始されていたのであり、撮影時期にズレがあることを考慮しても2年は放置されていることになる。ゆえに出演者に「アレ?」と思わせるような方がきわめて多い。さらにこれだけ待たされたのにもかかわらず某出演者の大麻所持事件が発生し1回分が放送されないという情報もある。また数年後にCSで初放送となるのだろう。全くもってファンを愚弄した対応である。
更に「広報は果たして存在するのか」とも思いたくなる宣伝のやる気の無さ。確かに役所広司以外は毎回登場人物が違う作品であり、フジテレビも「合い言葉は勇気」の時の仕打ち(別記)や、2年も眠らせていたという事情からいまさら役所広司に宣伝を依頼できる立場にないというのも推測できる。それなら番組スポットでカバーすればよいと思うだろう。しかし他のドラマは「これでもか」というぐらい見るのだが「盤嶽」に関しては全く見かけない。結局宣伝する気がないのだ。これではよほどの時代劇ファンで、かつ新聞やテレビ雑誌をチェックしない限り放送していること自体がわからない。このような状態では視聴率が上がるはずも無く、その結果再商品化の期待もできないだろう。
加えて3月~5月までの放送で、今年何故か多い(ように特に感じる)野球中継と「特番攻勢」により放送枠はつぶされ続け、一部には「放送自体が終わってしまった」という誤解も生ずる始末。これも宣伝不足によるところ大である。色々と調べてみると、どうやら6月以降野球中継は無くなるようだ。さらに懸念されたワールドカップ試合中継も日程上では無い。ただ大会関連特番というのがあるかもしれない。加えて、6月末~7月初にかけては「改編期特番攻勢」が考えられる。本来「改編期特番」はつなぎ対策であり、放送継続されている番組をそのためにつぶすというのは全くの本末転倒なのだが。
結局、本作は「どら平太」に匹敵、いやそれを凌駕するほどの痛快作品であるにもかかわらず、どこまでも不幸な作品なのである・・・

本作の現状について(2022.7.24)

上記の通り本作は地上波本放送時は惨憺たる状況であった。結局未放送回は2005年にCSで日の目を見ることになった。しかしながらその後は地上波はともかく衛星放送(BSフジ・CS時代劇専門チャンネル)での再放送の頻度がかなり多いことにくわえ、2016年にはDVDソフト化されるなど。比較的恵まれた状況にある。なんといっても役所広司主演の本格時代劇というネームバリューは高いのだろう。

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