放送日 1991年12月26日「世にも奇妙な物語・冬の特別編」(フジテレビ系)
世にも奇妙な物語、第2クール最終回(冬の特別編)5作中の掉尾を飾る作品
一介のサラリーマンである坂口(役所広司)は、妻(岩崎良美)と娘の3人暮らし。生活もそれなりに安定した彼は、妻の願いでもあったマイホームを購入した。しかしそこはしがないサラリーマン、通勤にもバスや電車を乗り継ぎ何時間もかかる郊外の一軒家であった。
ある朝、大きなテーブルを購入する相談をしていた坂口は、偶然娘が持ってきた父親(河原崎健三)の形見であるスケッチブックに、購入した自分の家が描かれていることを発見した。父親はスケッチ旅行を趣味としていた。それにしても・・・不思議がる坂口。その夜、かつて彼の実家の食卓として使っていたテーブルがやってきた。これは姉の家にあったものだが、邪魔とのことで譲られたのだ。しかし坂口にはこのテーブルに嫌な思い出があった。テーブルにつけられた傷を必死で直そうとするが、翌朝には何故か元通りになってしまう。その傷こそ、食卓に自分を縛り付けようとした父親に対する憎悪から、坂口が子供の頃つけた傷だった。高校時代、そんな父親を憎悪し、家を飛び出した直後に父親は脳溢血で死亡。結局彼が父親と共に再び食卓に座り、父親に謝る機会はやってこなかった。そのことが成長し家庭を持つようになった坂口の父親に対する後悔であった。
数日後、坂口は勤務先の同僚を新居へ招くべくホームパーティを開いたが、全員が何らかの理由でキャンセルとなってしまう。「遠いから誰も来ないんだ」と失望する妻と娘。そんな家族を励ますべく、彼は通勤の道道のことを話す。話しているうちに、自分のやっていることがかつて父親がしていたことと同じであることに気づく。その時ふと外を見ると、何と死んだはずの父親が佇んでいた・・・
私もそうなのだが、子供にとって「家族の食卓」というのは成長を重ねるにつれ面倒くさくなったり、嫌な空間になったりしてしまうものだ。最近は子供が自分の部屋で食事するという「孤食」が増えてきているというが、このあたりの感覚なのだろうか。親にしてみれば、「その場に子供がいて会話をすることが大事である」と考えているが、子供になかなかそれが伝わらない。結局「孝行するに、親は無し」状態になってしまうのか。厳密にはまだ人の親というものになっていない私にはわからない世界なのかもしれない。
最後に「研究室」的コメントを。この稿を書くにあたって何度か観たが、父親に会えた坂口の表情の変化には何度も感銘させられる。流石に役所広司というべきか。
(初稿 2001.5.6)