放送日 1984年2月9日
この時期の役所氏出演作というと、「仲代達矢主演、隆巴脚本、無名塾・俳優座オールキャスト」のようなパターンが多いが、この作品もまさにその中の一本である。1984年というと管理人としては既に役所広司をかなり意識していた時期ではあるが、流石に単発ものまではチェックできなかった。こうやって観ることが出来たのも多チャンネル時代到来(スカパー)のおかげである。
筋立てとしては何となくこの作品の2年前の制作である「地獄の掟」に似たような感じのあるところ。表向きは絵師でありながら実は盗賊の伊兵衛(仲代達矢)。成功率100%の伊兵衛の手口は、その場限りの素人衆を仲間に誘うことで、捕り手のマークを撹乱するというもの。伊兵衛はそれぞれ金を必要としている遊び人佐之助(役所広司)・浪人の清十郎(益岡徹)・夜具商の若旦那仙太郎(鷲生功)・老人弥十(殿山泰司)らを誘い、札差に押し込むことを計画。首尾良く押し込みは成功し、いよいよ逃げ出すというその時、店の小間使いの女が帰ってくる。なんとその女は佐之助の別れた女房きえであった。顔を見られた伊兵衛は、佐之助に殺しを命ずるが、流石にそこまで踏み切れない。そのまま伊兵衛たちは後日に金を分配することを確認し、別れ別れとなる。
その後、弥十は病気が元で亡くなり、清十郎はかつて妻をめぐって争った相手に斬られ、仙太郎は稼いだ金で手切れするはずの女に殺されてしまう。一人残った佐之助であったが、伊兵衛がきえに手をかけるのではないかと疑い、密かに監視する。そして、ついに伊兵衛がきえの前に現れた・・・
「信長」と「武蔵」の間の作品、役所広司自身の知名度もかなり上がっていた頃で、準主役的扱いとなっている。この時期の役所広司特有の「ギラギラしたもの」が全身から出ている。金で雇われて金貸しを脅すというシーンの凄味は、まさに血気にはやった若さそのもの。その一方で優しげな表情も散見。ラスト近く、きえが放った意外な言葉に呆然とする表情もまた佳い。
その他では、例によって益岡徹も出演。やはり最後には殺されてしまう役だが、佐之助の「血気」と清十郎の「沈着」の対比が絶妙。「地獄の掟」ではこの逆の役回りだっただけに、どんな役柄でも対応できるところは両者とも流石である。
(初稿2000.10.2)