放送日 1980年9月30日
「特命刑事」は渡瀬恒彦氏主演、梅宮辰夫氏が二番手の、ジャンルでいうと刑事物作品となるのだろうが、実際には操作の過程で銃をやたらと放ったり、明らかに一線を越えている犯罪者への対応など、同時期に制作された「西部警察」に比しても無国籍感が強い作品である。そもそもチーム名が「マッドポリス」という時点でヤバい。最終回、第10話「ファイナル・チャレンジ」に役所広司氏が敵方の戦闘員として出演している。
追い詰められた三人組の銀行強盗が「新成化学センター」という民間施設に押し入り、三人の所員を人質に立てこもるという事件が起きる。「早期解決、人質の生死を問わない」という通常の人質立てこもり事件では考えがたい指令を受けたマッドポリス。結果的には人質1名・犯人2名が死亡するも、首尾よく犯人(ここで石橋蓮司氏が文字通りチョイ役)を逮捕する。しかし、犯人との戦闘中にメンバーの原田が謎の薬品を体に浴び、重傷となり病院に運ばれる。
翌日、捜査を進めようとしたマッドポリスであったが、謎の火災で「新成化学センター」は全焼、人質となっていた所員二名も行方不明になるという奇妙な事態となる。
さらに、病院に入院していたはずの原田が、厚生省を名乗る人物たちに偽装した救急車で拉致されてしまう。
ここで役所氏が最初の登場。原田を移送する救急車に、全身防護服着用で乗り込んでいる。この服装では表情は目もとしか判らないが、画面からも明らかに中の人が役所氏であることがわかる。
さらに捜査を進めると、人質となっていた所長の加川が第二次世界大戦中の日本軍の細菌部隊の生き残りであり、「新成化学センター」でも細菌兵器の開発をしていたらしいことが判明。同時に捜査に対し上層部からの圧力がかかるなど、警察のトップを動かす権力の存在を感じるチームであったが、そんなことはお構いなく、ピッキング(←本当に刑事なのかよ)で加川のアパートに潜入する。しかし冷蔵庫に仕掛けられていた小型時限爆弾が爆発、と同時に向かいのビルから二人組の男たちにライフル狙撃され、ライフルと拳銃の撃ち合い(街中ですよ)となる。
一方、原田の拉致に成功したが、マッドポリスの動きを察しつつある敵方、という場面で役所氏がスーツ姿で2度目の登場。
直属の上司からの「大丈夫なんだろうな」という問いに対し「はい、連中の動きは無線の傍受でつかんでいます」と返答(本作唯一のセリフ)した後、部下(?)に「行くぞ」と声をかけて出て行くというシーンである。
さらなる捜査の中で、敵方の組織が元自衛官である「都倉」をリーダーとする「都倉機関」であることが判明。自衛隊を背後にする組織に対し、マッドポリスのチームでは明らかに勝ち目のない戦いであったが、原田救出のために敵方の根城である富士山麓にジープ2台で向かっていく。
対する都倉機関は自衛隊を背景に少なく見ても30台近くのジープとそれに乗り込む戦闘員が待ち構えていた。
この戦闘員として役所氏3度目の登場、マッドポリスに対する戦闘開始を腕を振る仕草で指示する。
この物量差において、都倉機関側は当然に包囲殲滅で対応すべきところであるが、なぜか(まあドラマだから・・)一騎打ち戦略をとり続け、各個撃破され続けた結果、マッドポリスに防衛戦を突破されてしまう。
マッドポリスに敗れたことを都倉に報告する場面で役所氏4度目の登場。残念ながら「マッドポリスが迫っている」ことは別の戦闘員のセリフとなっている。その直後にマッドポリスが研究施設に突入。原田を救出すると共に、都倉を人質に脱出をはかるが、そこはこれだけの大組織を束ねていた都倉、「自分にかまわず撃て」と部下に言い放った直後、撃ち合いとなるが、結局は都倉機関側は戦闘員・加川を含めた研究員ともに全滅する。役所氏5度目の登場は死体であるが、数体のうち最後のカットでありかなり目立っている。
エンドタイトル「細菌兵器の研究開発、この悪夢のような異常な計画は、特命刑事マッドポリスのファイナルチャレンジによって完全に絶たれたのであった」
以上のように、役所氏は画面上でも十分確認できるし、出演者クレジットもしっかりあるのでわかりやすい。役所氏の無名塾時代初期は刑事物や時代劇ドラマが数多く制作された時期でもあり、この種の出演は実際には相当数ある気もするが、情報が無ければとても追いかけられるものではないだろう。
(初稿 2022.10.20)