三匹が斬る!

放送日 1987年10月22日~1988年3月31日

シリーズ総論(初稿 2002年8月27日、更新 2022年7月18日)

今でこそ役所広司といえば「現代劇・映画」俳優という印象が一般に持たれているが、この評価と全く異なるベクトルの「時代劇・テレビ」俳優だった時期もあることは今更言うまでもない。その代表的作品が「三匹が斬る!」シリーズである。近年一部を除き絶滅状態にある「チャンバラ時代劇」の典型的作品だ。ただこのシリーズの他と一寸違うところは、三匹がそれぞれ絶対善として悪人を懲らしめるという単純なストーリーではないことだ。ある事件に対し最初は三匹がバラバラに遭遇する(殿様⇒善側・千石⇒悪側・たこ⇒真相を知るキーマン・というパターンが多いがそうでないこともある)が最後には悪側を斬り捨ててめでたしめでたしというのが基本線となっているが、善側・悪側双方に三匹の誰かを配置することで、善悪双方の人間関係を当事者として描き出すこととなりストーリーに深みをつけている。さらに、善側といってもこれまた「絶対善」としては描かれず、善側故に持つ「問題点」を鋭く指摘する場面(典型的な武士道を批判する箇所が多いことに着目すべきだろう)も多い。こうしたところを見ても、単純なチャンバラ時代劇ではないことがわかる。

加えて三匹それぞれのキャラが際立っていたことも特筆されるべきだ。高橋英樹・役所広司・春風亭小朝それぞれに個性が十分にあったからこそ、三人のうちの誰かに他の二人が引っ張られたり、一人が置いて行かれたりというようなこともなく、絶妙なバランスをとった作品として成立していた。後期には役所広司・高橋英樹がそれぞれ他の仕事で抜け、ピンチヒッター的に近藤真彦が穴埋め的出演をするシリーズもあるが、どうにも違和感があり実のところ筆者は本放送・再放送ともにこれまでほとんど観ていない。所詮彼は役所広司・高橋英樹の代役をつとめ得るだけの器ではないし、そんな作品を放送するのならいっそのこと休んでしまったほうが良かったとさえ思える。

時代劇は数が少ない割に高齢者中心に再放送に対する需要は多いようで、「三匹」に限らず午前中や夕方に再放送されることが多い。ネットでの情報によれば、「三匹」は最近でも全国各地で断続的に再放送されているようだ(この「断続的に」というのが問題ではあるが)しかし私の住む北海道では何故かこの10年近く「三匹」シリーズが再放送された記憶がない。ドラマの再放送枠はそこそこあるにもかかわらず、時代劇の再放送は極めて少ないのが北海道TV局の妙な特徴だ。確かに最近の時代劇の本放送視聴率は低迷気味ではあるが、そのことと再放送の視聴率とを一緒に考える(ゴールデンタイムの本放送と午前中や夕方の再放送とではTVを観ている層が全く違うことに着目しない?)浅薄な発想にとらわれているのではなかろうか?

こうした何とも合点が行かない状態でここ何年か鬱々とすごしてきたが、今般CS「時代劇専門チャンネル」で再放送開始となり歓喜の極みである。情報によれば第3シリーズまで放送されるようだ。ただ残念ながらスペシャル版は放送されないという情報もある。それはともかく、こうなるとストーリー紹介をしたくなるが、既にうえすとえんどさん主宰「殿様千石たこ道中」等の詳細サイトがありここで私がストーリー紹介する必要は無いのではなかろうか? それなら千石中心に簡単に書こう、と考えていたのだが、ちょっと書いてみたらいつも通りやはり詳細にわたるストーリー紹介となってしまった。そこで各回の最後に一応「今回の千石」として寸評を加えることにした(この部分だけでいいような気もするのだが)


というのが旧ページにおける総論であり、この後に各話のストーリーについて細かく書いていたが、今回の移行にあたりいったん全て省略することにした。

本シリーズ開始時のレギュラー登場人物設定

殿様(高橋英樹)矢坂平四郎。尾張浪人。本人は一介の素浪人と話すも、浮世離れした言動・行動・容姿から、大名家の次男ではないか(たこの推測)ということになり、「殿様」と呼ばれる。
千石(役所広司)久慈慎之介。薩摩浪人。生まれついての浪人であり、大名家への仕官を求めている。自分の腕は千石取りの価値があると主張しており、「千石」と呼ばれる。
たこ(春風亭小朝)燕陣内。自称甲賀忍者の末裔。いつも妖しげな商売をしている。初回でたこの吸出しを売っていたことから、「たこ」と呼ばれる。
おけい(杉田かおる)初回に悪党の被害者として登場する風呂屋の孫娘。江戸に日本一の料理店を建てる夢を持ち、三匹と共に各地の名物を探求する旅をすることとなる。

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