象の背中

昨日より公開。事情があっていつものように初日の初回とはいかず、2日目の初回に視聴。

予告編開始時の観客は私と妻を含めて3人程度・・・であったが、予告編開始後10人ぐらいは入ってきた感じ。
日曜日の10時という時間帯を考えると、こんなものか。年代は予想通り私より上の世代ばかり。


ひとことで言ってしまうと、「肺ガンで余命半年を宣告された男が、その半年という期間をいかに生きるかを模索する」という話。

藤山幸介は不動産ゼネコンの不動産部長として将来を嘱望されていたが、健診で「肺ガンが全身に転移しており、余命半年」と宣告される。
治療をすすめられるも、「死ぬときまで生きていたい」という希望から、手術は一切行わず、長男以外の家族にも教えない。
幸介は妻と長男・長女の4人家族であるが、それぞれ帰宅時刻がバラバラなのと、幸介には外に愛人がいることもあり、「プチ家庭崩壊」状態にあった。
6ヶ月の間にしようとしたことは、過去において気がかりとなっていた人との再会であった。
初恋の人・高校時代の親友との再会を果たした直後、会社の方針で人生を崩壊させた人物と偶然に再会。
彼もまたガンで余命長くないと聞き、自分のことは言い出せず謝罪、ボコボコにされるが、自分の甘さを痛感する幸介。

その間も体調は日に日に悪化し、ついに会社で倒れて病院に担ぎ込まれる。この時点で妻はガンであることを初めて知る。
自分が手がけていたプロジェクトの行く末をみたうえで、幸介は会社を退職。絶縁状態となっていた兄に自分が死んだあとの資金手配を依頼する。

この後、更に体調は悪化しホスピスに入ることになる。ホスピスから愛人に連絡する幸介。電話口では行かないと言っていた愛人であったが、最期の機会ということからか見舞いにやってくる。妻は全く知らないそぶりであっが、事実はどうだったのか。

兄が資金手配が完了したことを告げるために見舞いにやってくる。「何故年長である自分が弟を看取らなければならないのか」と嘆く兄に対し、「整理したように振る舞ってるけど、やはり死ぬのは怖い」という幸介。。

そしてついに「その日」がやってくる。


このストーリーでポイントとなるのは「愛人の存在」なのだろう。この部分の評価によって映画の評価が変わりそうだ。
私個人としては、こういう組み立てもありかと思う。上にも書いたように愛人の件も含めて当初はプチ家庭崩壊状態だったものが、徐々に変わっていくという過程を見せる上でのアクセントになっているのだと思う。
特に「ガンであることを妻には話さないが愛人には話す」というあたりが、幸介のずるさを示すエピソードになっているのではないか。

基本的に泣かせる話だけに、映画館でも周囲の観客が声を上げて泣いているのがわかるくらい。
その中で私が不覚にも「やられた」のがホスピスでの兄との場面。それまで2時間近く他人に自分の「想い」を見せていなかった幸介が、兄に対して心情を吐露するという展開は、私にとって「泣き」の入る場面であった。

益岡徹とのやりとりや、冒頭に登場する井上肇・鈴木英介両者に役所広司ファンとしては目がいくが、この他の脇役も非常に堅いところがそろっている。
ストーリー面から、話題先行になるであろう作品だが、映画館で観ておくべきだろう。

(初稿2007/10/28)

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